【731】 ○ 三品 和広 『経営戦略を問いなおす (2006/09 ちくま新書) ★★★☆

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「戦略は人に宿る」。結局、戦略よりも経営幹部の人選が肝心ということか。

経営戦略を問いなおす.jpg経営戦略を問いなおす (ちくま新書)』 〔'06年〕  三品 和広氏.jpg 三品 和広 氏(略歴下記)

 第1章で、日本の上場企業の多くが'60年代から40年間、売上面では成長しているが、営業利益率が下降の一途を辿っていることをデータをもとに指摘し、ただし、その中でも営業利益を伸ばしている企業は、他の競合企業と経営戦略の面でどう異なるのか分析、それはまさに時代の流れに即した選択がなされているからだということを示しています。
 「成長戦略」という言葉がよく使われますが、成長ということが目的化することの愚を説き、また、MBA信仰に見られる「戦略=サイエンス」といいう考え方の危うさを指摘し、戦略とは主観的なものであり、それは「人に宿る」と。
 
business strategy.jpg 第2章では、経営戦略を立地(ポジショニング)」、「構え(垂直統合、シナジー、地域展開)」、「均整(ボトルネックの克服)」の3つの軸で解説し、第3章では、経営戦略の立案を現場に押し付けてはならず、日本企業では、トップと現場の間(はざま)で事業本部長あたりが戦略計画の立案などに追われているが、もともと、過去に成功した戦略とは、優れた経営者が時代のコンテクストにおいて洞察力を示した結果であり、短期の事業計画に付随してスイスイ実行できるものでもなければ、部課長クラスの手に負えるものでもなく、そこに日本企業の多くが、戦略があってもそれが機能していないという「戦略不全」状態に陥っている原因があると述べています。
 
 結局は、下手な戦略より経営幹部の人選が肝心であるということで、弟4章以降は経営人材論のようになっていて、戦略をつくる人を選ぶには過去の実績やパーソナリティより、テンパラメント(気質、感受性)を重視すべきというのが著者の主張で、最後の第5章のタイトルが「修練」。この部分は、若年層、中堅・幹部社員に送るメッセージがあり、キャリア論的な感じ。 

 経営戦略とは何かという話から、だんだん、戦略を担う人材は いかに育成されるのかという帝王学的な話になっていく感じもしますが、ハーバードビジネススクールで教鞭をとっていた人が、「戦略はサイエンスではなくアートである」とか、「研究すべきは創業者の理念である」とか言っているのが面白い。 
 目の前の人がMBAかどうかは、目の奥に「田の字」が見えればMBA、というジョークが笑え、SWOTとかPPMとか2×2のマトリックスで経営ができるるならば、確かに経営なんてわけない、ということになるなあと納得させられました。
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三品 和広氏
一橋大学商学部卒、同商学研究科修士課程修了、ハーバード大学ビジネスエコノミックスPh.D.、ハーバードビジネススクール助教授を経て神戸大学大学院経営学研究科助教授。
主な著書論文に、"Learning by New Experiences:Revisiting the Flying Fortress Learning Curve"、"日本型企業モデルにおける戦略不全の構図(組織科学)"、"日本企業における事業経営の現実<日本企業変革期の選択(東洋経済新報社)>"等。

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